我が国の2024年のデータでは、1人の女性が一生涯に産む子供の数に相当する合計特殊出生率は、過去最低だった2023年の1.20を大幅に下回る1.15となりました。出生数(日本人)も過去最低を更新。出生数は前年比5.6%減の68.6万人と、2015年以降の平均減少率4.2%/年から減勢が強まると予想され、出生率・出生数ともに上昇出来ていない状況です。
以前にも書きましたが、2023年に岸田首相(当時)が「異次元の少子化対策」をぶち上げたが、さしたる効果は見られず、日本の人口は減っていくばかりです。
そんな中、本当に異次元の対策を打ったのがハンガリーです。そこで今回はハンガリーの少子化対策について記します。特記すべきは2024年に発表した、「2人以上の子どもを持つ母親の『所得税生涯免除』」になるでしょう。オルバーン首相は大胆な家族政策を打つことで出生率を引き上げたという実績があります。2010年の特殊出生率=1.25を、2021年の特殊出生率=1.59まで引き上げました。ただしその後は伸び悩み、2024年に母親の所得税生涯免除を打ち出したのです。
現在のハンガリーで行われている、給付や税控除の数々を代表的な項目でまとめました。
○2人以上の子どもを持つ母親の『所得税生涯免除』
○住宅支援制度 子どもの数に応じて住宅購入や改築の補助金を支給。
子どもが増えるごとにローンの一部が免除される仕組み ※子供3人生まれると住宅ローン免除
○出産ローン・祝い金 440万円迄無利子で貸与、条件達成で返済免除、誕生一時金などの支援
○家族手当・家族カード 毎月の家族手当(約5〜7千円)。生活費の割引用家族カードなど
※2歳になるまでは祖父母にも育児手当あり
○不妊治療費の助成 治療費や薬代の補助も行われています
○学生ローン免除 出産ごとに学生ローンの一部免除
これらの方策の副産物として婚姻数は2倍に増加し、離婚数は30%減少するなど、社会的安定にも寄与しました。21年からの伸び悩みは急激なインフレやコロナ禍という理由も大きいと思いますが、少子化に対して政治が及ぼせる影響力の限界も示唆されます。それでもハンガリーの少子化対策は欧州の近隣諸国より出生率を回復させ、所得税生涯免除のような大胆な政策を打ち出したことで、ハンガリー国内外の保守派を中心に注目を集めています。「国が中長期的な視点に立って本気で少子化に立ち向かっていく」という姿勢を見せていることは、未曾有の少子化に悩む日本にとっても参考になると思います。
「母親の所得税の生涯免除」が象徴的ですが、オルバーン首相は伝統的なジェンダー観に根差した家族政策を志向しているようです。ハンガリーの特徴として、移民ではなく自国民の出生による人口増加を目指すナショナリズム的な方針が背景に存在します。結果として移民等の労働力不足や経済成長の制約が生じており、家族支援策の予算はGDPの5%を超えるとも言われ、国家財政への圧迫が懸念されています。
ハンガリーの法人税率は9%、個人所得税率は15% と非常に低く設定されており、消費税でバランスを取っています。EU諸国の中で最も高い27%の消費税収により、家族支援政策や教育・医療への支出を維持しています。また医薬品、住宅建設など5%と3段階の軽減税率を取っているものの、消費税27%は経済成長の制約にもなってきています。
ハンガリーは多彩な少子化対策を打ち出す国ですが、その全てが成功しているわけではありません。それでも、多種多様な政策を組み合わせることで、子供を増やす努力が目に見える形で行っていることは事実です。
特殊出生率1.15の日本の少子化は「有事」と捉えるべき事態であり、「異次元の少子化対策」と言っただけで悠長に構えている時ではありません。あらゆる対策を施し、そのいくつかは上手くいかなくても、それでも高市早苗新首相には、国家財政内で切れるカードは全て切っていただきたいと願っています。
八千代幼稚園 理事長 千葉栄一
posted by 八千代幼稚園 at 10:24|
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